色々文章の勉強もかねて書く所

文章を上手く書けるようになりたいので、文章の練習に使っているブログです。2015年頃の初期の記事は適当な物も多いです!ごめんなさい!文章の練習にここを使わせてください!

湯浅政明監督の日本沈没2020の感想

今回の湯浅政明監督の日本沈没2020は非常に長い胸糞のトンネルを観客に通過することを要求する、しかし終わってみれば非常に湯浅監督らしい王道な物語になっている印象がある。

 

まあまず冒頭、開幕1話だけで矢口史靖監督のサバイバルファミリーの序盤の胸糞を10倍酷くしたような最悪な展開が続いていく。

 

しかもそこでタチが悪いのは、主要登場人物たちの希望のメッセージの独白とともに、最悪の事態が訪れるという演出である。ここに湯浅政明監督の黒い側面を感じることができる。

 

映像研には手を出すなであれほどまでにポップでキャッチーだった湯浅監督の裏返しかのように、 Netflix と言う極めてインデペンデントな作品を提供できる場として、この作品は非常に特殊なバランスで成り立っているアニメシリーズだと言えるだろう。

 

昨今のアニメは可愛い女の子が登場して、なんだかよくわからない当たり障りのない会話をして20分を終えるアニメが多かったり、主人公がそこまで徹底的に追い詰められないアニメが主流だ。

 

そういった中で、 湯浅政明監督の「これがやりたかったんです」という気持ちがこの作品には込められているような気がする。

 

セックスとバイオレンス、そして集団ヒステリー、しかしその中で前に進もうという希望の気持ちを持とうとする者たちの物語という点では、湯浅政明デビルマンとこの作品は大いに通じる点がある。

 

作画はかなり最小限なイメージもあるが、これはこれで味があるものになっている。

 

特に最終話、カイトの顔が乱れるシーンは、まさしく湯浅政明印を感じざるを得ないだろう。

 

胸糞とギスギスとパニックと、湯浅政明監督が版権を題材にした作品ではそういった描写は省かれていることがほとんどだが、実際にはこういった創作もしたい。と言う湯浅監督の黒い欲望を垣間見る上でも、見てみる価値はあるだろう。

 

正直最終話を見るまでは「キャラクターを追い詰めておいて何の救いももたらさないなんてひどい作品だな」と思いながら見ていたが、最終話が終わってみると、あれほどまでに胸糞だったシーンすら「人間賛歌」のメッセージの裏返しだったんだなぁと言う 思いが残るのはさすが湯浅監督と言わざるを得ないだろう。

 

湯浅監督の世界に対する嫌悪感を表現しながら、しかしそれでも「人間は素晴らしい」「いくらだって立ち上がれる」というメッセージ性を同時に表現し、それでも全体のバランスは乱れていない。

 

ここに湯浅監督の着地の上手さと映像作家としての根本的な実力の高さがうかがえるだろう。

 

湯浅監督の今後の作品にも期待が持てるし、こういった非常に奇妙なバランスの創作物が公開できそれが認められると言う Netflix と言う場所の良さも体感することができた非常にいい体験をすることができたと個人的には思っている。

 

みんなも是非、暗くて長い胸糞のトンネルの先にある希望に辿り着いて欲しい。