色々文章の勉強もかねて書く所

文章を上手く書けるようになりたいので、文章の練習に使っているブログです。2015年頃の初期の記事は適当な物も多いです!ごめんなさい!文章の練習にここを使わせてください!

ミヒャエル・ハネケのハッピーエンド短評:ラストシーンのネタバレあり

filmarksの方のレビューをブログにも載せときます。

 

とにかくカメラが動かない。水平に固定された遠くのカメラがとにかく動かない。

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↑とにかく動かない!

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↑動かないぞ!
カメラが動かないもんだから観客もソワソワしてくるワケである。でもそれがハネケ自身の狙いでもある。71フラグメンツのピンポンのシーンと同じ。ただただ我々は「映像を見せられる側」に回される。

カメラが動かないなぁと思ったら人物を追いかける怒涛の長回しの連発。バードマンもビックリの長回し長回しの連続で仰天させられる。これからこの映画を見る人はぜひ「いつカメラが切り替わったのか」に意識を集中して見て欲しい。

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↑病院の待合室からカメラがスタートして・・・

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↑エレベーターの中に入り・・・

 

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↑母親の病室までで1カット。ここまで1カット。流石ミヒャエル・ハネケ

相変わらず音響も凄い。自然の音はもちろん、役者達が食事中にする「クチャ・・・」みたいな音や、場面が緊張したここぞという状況で役者の息遣いが聞こえるようになる所含めて、相変わらずハネケ監督の音響は素晴らしい。

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↑クチャクチャ・・・とか食器のカチカチ・・・とかの音に注目。。そして相変わらずカロリー不足のハネケ飯。「男メシを美味そうに食う」ジブリの真逆。

レイアウトも美しい。レイアウトと長回しだけで面白い映画だなぁと思ってしまう。他の監督が同じプロットと脚本と役者で映画を撮ったとしても面白くはないだろう。この映画を面白くしているのはなんと言ってもレイアウトと音響と「撮るの大変だったろうなぁ~」と思わんばかりの長回しの連発から来る「スクリーンに張り詰めている緊張感」に他ならないだろうし、そういった難しい形で面白いというクオリティに映画自体を持っていけるミヒャエル・ハネケという映画監督はやはり凄いなと感心してしまう。

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↑このカメラ1ショットの美しさだけでもう1流の映画監督だとわかってしまう。

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↑2人が車の中で会話するシーン。会話中に外の風景のカットは一切挟まない。

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↑とにかく2人のこのカットの繰り返しが延々と繰り返されるので窮屈極まりない。このように、この映画の人と人との会話は極めて窮屈に描かれている。


我々観客はカメラに拘束されていて、状況を眺める傍観者でしかなくただ眺めている事しか出来ない。

それは例えばtwitterで人が殴られている動画を目の当たりにしたとしても、私達はそれを解決する事もその事態に介入する事も不可能のまま、その動画を見ることしか出来ないのと同じだという事を伝えたかったんだと思う。

ラストシーンで海に落ちそうになる爺さんをただ動画で撮影する幼女エヴの姿は「仮に酷い状況を目撃したとして。録画してSNSで拡散する事には何の意味もなく、ただただ不快感が残るだけ」という事をハネケが言いたいのではないのかと思ってしまう。だがしかし、今日も明日もきっと、幼女エヴが撮影したような胸糞悪い録画ファイルは、ずっと今後も現実世界のSNSや動画サイトにアップロードされ続けてゆくのだろう。録画してアップロードした所で、何も変わらないけれど。

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↑見てるだけで(すげえRT稼げそうだな)とか思っちゃったからもう病気

仕方ない。電車で変なヤツが居たら、ソイツを撮らずにはいられない。他人を殴るヤツが居たら、スマホで撮影してSNSで拡散するしかない。それが状況を解決するワケではないけど、でも俺たち人間は「撮らずにはいられない」時代になってしまったんだなぁ・・・

www.youtube.com

そんなミヒャエル・ハネケのハッピーエンドっぽい。「撮影はするけど事態に介入しない」系の映像のリンクを貼っときます。この撮影者は、やめてくださいと言うワケでも無く、ただただカメラを回すワケです。幼女エヴと同じです。実際幼女エヴのように「ただ撮影して状況に介入しない」という行動を取る人間はtwitterにおいては多数派でしょう。でもそれも時代の流れです。どうしようもないのです・・・

 

というわけで面白い映画なので見てね!ただハネケ映画デビューなら愛、アムールの方が良いよ!

 

ハッピーエンド(字幕版)
 

 

 

愛、アムール(字幕版)
 

 ↑こっちのほうが映画としては見やすいです